■知れば知るほど引き寄せる!妊娠力UP@基礎知識講座
卵管が狭くなったり、詰まっていたり、癒着などにより卵管が自由に動けないと妊娠が妨げられます。それを卵管通過障害と言います。
まず精子が通る道ですから、そこに障害があるということは、受精の妨げになることが容易に推測できます。また、仮に運よく受精出来たとしても受精卵が子宮に戻るのを阻害してしまうことになります。
ある意味、分かりやすい不妊原因の一つと言えます。
原因は大きく分けて2つ、考えられます。
1) 卵管留水症、留膿症、クラミジアなどによる通過障害や機能障害
卵管は卵子を運んだり、卵子と精子が出会って受精したり、受精卵を少しの間育てたりするとても大切な働きがあります。
受精卵は、卵管から酸素や栄養をもらいながら、分割を繰り返しつつ、卵管の表面に生えている細かい毛の運動と卵管の壁の筋肉の収縮により、約1週間かけて子宮内に移動します。
卵管留水症、留膿症といった卵管内に膿性や水溶性の貯留液が生じた病態がある場合、卵管に機能障害があり、卵子をうまく運べないので受精することができません。
またクラミジアなどの感染により、炎症などで卵管内の機能が落ちてしまうと、やはり受精したり運んだりすることができません。
2) 子宮内膜症やクラミジアなどの炎症による卵管周囲の癒着
卵管自体には何も問題がなくても、排卵した卵子を拾えない場合があります。
卵管の先は、卵管采で手のような構造になっています。この卵管采が排卵した卵子をふわりと受け止めるのですが、何らかの原因でがっちりと癒着していると、卵子を拾いにいけないのです。
お腹の中に子宮内膜症があったり、クラミジアや淋菌などの感染症にかかったことがあると、このような癒着の原因になるといわれています。
検査はクリニックによって違うと思いますが、卵管通過障害の検査としては卵管造影がメインの検査となっています。治療的に通水を行うクリニックも多いようです。
●通気検査
通気検査とは、子宮口を蓋で閉じて二酸化炭素などのガスを送り込み、おなかに聴診器を当てて卵管の先より腹腔内にガスが出る際の音を聞いたり、経時的に内圧をグラフに表したりする検査です。
(※経時的とは、時間の経過とともに変化などが進むさまを言います。)
この検査は、卵管の途中に穴があいていたり、片方の卵管だけがつまっている場合には、正確な診断ができません。
●通水検査
卵管通水検査とは、子宮口から生理食塩水をカテーテルで送り込んで、水圧の変化等から卵管の通過性を検査する方法です。
卵管の詰まり具合の正確性は、子宮卵管造影検査と比べると低いですが、この検査では癒着をとる治療的な効果が期待できます。
卵管通水検査は、レントゲンが必要ないので小さなクリニックでも簡単に導入が出来るのがメリットです。
●卵管造影検査
X線に反応して白く写る造影剤というものを子宮の中に注入して行う放射線の検査です。 不妊症の検査では必須の検査といえます。卵管の通り(通過性)の様子、卵管周囲の癒着の様子、子宮の内側の状態の確認に役立つ検査です。
子宮卵管造影後に妊娠するケースも少なくありません。
これは卵管内に液体を注入することで通過性が高まるからです。
●腹腔鏡検査
卵管の外側の癒着を調べるには腹腔鏡検査で目で確認する事がメインになります。検査を行いながら同時に卵管形成術を行うケースもあります。
◆ 腹腔鏡検査とは?
腹腔鏡とは、お腹の中(腹腔)を直接観察する直径1㎝程の内視鏡です。
おへその下を1~2㎝前後切開して、お腹を炭酸ガスで膨らませてから腹腔鏡を挿入して、腹腔内の様子をテレビモニターに映して観察し、さらに小さな傷を何個かつけて穴を開け、鉗子という細い器具を使用して行う手術です。
腹腔鏡検査を行うと、腹腔内と骨盤内の臓器を実際に見て判定することができます。
腹腔鏡検査は、卵巣や卵管、その周辺が正常かどうかを検査する方法です。
医師は、癒着やそのほかの問題点があるかどうかを同時に評価することもできます。
この検査の利点は、子宮内膜症や癒着が確認されたときに、その場で治療をすることができることです。
レーザー治療または焼灼を行い、子宮内膜症や癒着を「切除」することができます。
腹腔鏡は、ほかの手技よりも直接的に卵管を検査することができます。
色素を子宮に注入することにより、医師は卵管の先端から色素が流れ出てくるかどうかを見て、卵管が通っているのか、または詰まっているのかを評価することが可能になります。
検査自体が不妊の治療法になることを前述で解説致しましたが、それ以外の治療法について解説してまいります。
●卵管に炎症やのう腫がある場合の治療
治療は抗生物質と消炎薬投与で様子を見ていきますが、症状がとれず腫瘤の縮小が認められないものでは手術が必要になります。
●卵管鏡下卵管形成術(FT)
卵管鏡下卵管形成術とは卵管の通過障害を改善するために行います。 子宮卵管造影検査で、卵管狭窄(通過はあるがかなり狭い)や閉塞(通過性がない)と診断された場合が対象です。
子宮卵管造影検査で、卵管狭窄(通過はあるがかなり狭い)や、閉塞(通過性がない)と診断された方で体外受精ではなくタイミング療法や人工授精などの自然妊娠を希望している場合、この方法を使うケースが増えています。
卵管の中を観察しながらバルーンというプラスチックでできたチューブを通し、通過障害のある部位を広く押し広げ開通させます。 最後に卵管鏡(胃カメラのようなもの)により卵管内腔を観察して通過状況を確認します。
体外受精を選択する前にFTを選択するケースが増えております。
●体外受精
卵管が詰まっているのだから、その部分をショートカットする体外受精は、不妊治療においての卵管通過障害の治療法の選択肢の1つになっています。
特に両方が閉塞している場合、FTでの治療を受けられない地域や、FT治療を受けて再狭窄するような方は、体外受精の適応となります。
<最後に>
卵管通過障害の場合、原因がはっきりとしているので、その通過性を確保する事で妊娠をすることが可能になります。
しかし、卵管通過障害において最も重要なのは、クラミジア感染の予防です。
クラミジア感染から発展して、卵管のトラブルになることが多いので、クラミジア検査を適宜、行う事が必要だと考えられます。
また、卵管通過障害と共に見つかりやすいのが子宮内膜症です。
検査で見つかって治療しなければいけないケースも多いようです。
どちらにしてもきちんと定期的に婦人科検診へ行く事が大事だということが分かりますね。
■コラム執筆 池上文尋 氏
オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。