■知れば知るほど引き寄せる!妊娠力UP@基礎知識講座
「何回流産を繰り返すと不育症と定義するか?」実は学会でも、未だ決まっていません。
しかし、一般的には2回連続した流産・死産があれば不育症と診断し、原因を探すことになります。
今回は、この不育症について解説をさせて頂きます。
妊娠はするけれども、流産、死産や新生児死亡などを繰り返して結果的に子供を持てない場合、「不育症」と呼びます。
「習慣性流産」は、ほぼ同意語ですが、これらには妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれません。不育症はより広い意味で用いられています。
また、1人目が正常に分娩しても、2人目、3人目が続けて流産や死産になった際、続発性不育症として検査をし、治療を行なう場合があります。
●厚生労働研究班による不育症のリスク因子別頻度は下記の通りです。
子宮の形が悪い子宮形態異常 : 7.8%
甲状腺の異常 : 6.8%
両親のどちらかの染色体異常 : 4.6%
抗リン脂質抗体症候群 : 10.2%
凝固因子異常 : 第XII因子欠乏症7.2%、プロテインS欠乏症7.4%
なお、不育症例に陽性率の高い抗リン脂質抗体の一種である抗PE抗体陽性者が、34.3%に認められますが、この抗体が本当に、流産・死産の原因になっているかは、未だ研究段階です。
その他、NK活性という免疫の力が亢進している症例も認められますが、この検査の意義も未だ研究段階にあります。
※NK活性とは、ナチュラルキラー細胞の働きの強さを表す、生体の免疫力の指標のこと。
検査をしても明らかな異常が判らない方が65.3%にも存在します。抗PE抗体陽性者を除いても約40%は原因不明です。この「原因不明」という用語は正しくは「偶発的」とした方が良いのかも知れません。
流産の原因で最も頻度の高いものは、赤ちゃん(胎児)の染色体異常で約80%に存在します。 つまり、赤ちゃん以外の要因(抗リン脂質抗体、凝固異常、子宮異常、甲状腺異常、夫婦染色体異常)は約半数となります。
これらのリスク因子を調べて原因がはっきりとした人は治療を行ないますし、原因が判らなかった原因不明の方(偶発的な流産をくり返したと思われる方)は、何も治療をしなくても、次回の妊娠で成功する確率は高いです。
血液検査により、夫婦それぞれの染色体の検査、糖尿病、甲状腺機能や黄体機能などのホルモン検査、凝固因子検査(血を固める働きをみる)、抗リン脂質抗体測定などを行うこともあります。
子宮の形の異常や子宮頸管無力症などを調べるために、子宮卵管造影検査を行います。必要に応じてMRI検査などを追加して行う場合もあります。流産を繰り返した時に、流産胎児の染色体異常を検査することもできます。
原因を特定することにより、次回の妊娠に役立てることができます。
検査で見つかった異常について治療を行います。
内科疾患やホルモン分泌異常が見つかった場合にはその治療を行います。凝固因子異常や抗リン脂質抗体症候群では、抗血栓療法(アスピリン内服やヘパリン注射)を行う場合もあります。
今のところ原因不明不育症に対する確立された治療法はありませんが、積極的な治療をしない経過観察でも、比較的良好な結果が得られています。
治療および無治療の患者さんも含め全体としてみると、次の妊娠で約70%~85%の患者さんが出産に至るという報告があります。
流産が2回以上起きた場合、それが偶然なのか、それとも病的に起きたのかを判断するのは検査をしないとわからない訳で、きちんと不育症治療の知識を持っておられる先生のところに行かれることをお勧めいたします。
今回、参考にさせて頂きました厚生労働省のサイト( http://www.fuiku.jp/aisatsu/ )に研究されている先生方の一覧がございます。この先生方は不育症について詳しい先生方ですので、外来があるのかどうかを調べられると良いかと思います。
また、以前取材をさせて頂いた、杉ウィメンズクリニック( http://www.sugi-wc.jp/index.html )の杉先生は、不育症を専門的に治療されています。
生活習慣なんて関係ないと言われる先生もおられますが、私はそうではないと思っております。以前、ある新聞社が発表して大問題になりましたが、コンビニ弁当の残飯を食べた豚の流産が増えたという記事です。
因果関係が学術的に認められないとはいえ、事実起きたことですから可能性を否定できないと思っております。今の時代、食品にはほとんど食品添加物が入っており、それらの影響は少なからずあるかと思います。
<最後に>
以上のことから、我々ができることは、
・出来るだけリスクの低い自然で新鮮な食材を摂取すること
・夫婦お互いに健康を維持するための努力をすること
などが考えられますが、
第2回:妊娠にいたらない理由とは? でもお伝えしましたように妊娠を望むのであれば、出来るだけ早く、自分の身体の状態を知っていただくという意味で婦人科検診や精液検査だけは、受けておいて頂くのが良いかと思います。
■コラム執筆 池上文尋 氏
オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。