■知れば知るほど引き寄せる!妊娠力UP@基礎知識講座
今回から2回シリーズで不妊原因でもよく見られる疾患である、子宮内膜症についての解説を行ってまいります。
子宮の内側を覆っている「子宮内膜」は、排卵が起こると受精卵が着床できるよう、ホルモンの作用によってフカフカの柔らかい状態へと変化します。
しかし、受精卵が着床しない、つまり妊娠しないと、受精卵のために準備されていたフカフカの子宮内膜は血液とともにはがれ落ち、子宮口から外へと排出されます。
これが、月に一度の月経で、女性の月経期間である約40年間、子宮内膜は増殖と剥離を繰り返しているのです。
子宮内膜症とは、本来、子宮の中だけにあるはずの子宮内膜が、何らかの原因によって子宮以外の場所にできてしまう病気です。
通常、子宮の内側にある子宮内膜は、毎月月経のたびに子宮の内側からはがれ落ち、月経血として腟から体の外に流れ出ていきます。しかし、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜は出口がないため、腹腔内にとどまってしまいます。よって病変部位に古い血液が溜まり、炎症や痛みなどが発生します。
出来やすい場所は、卵管、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)などの子宮周囲の組織や腸や直腸といった組織ですが、まれに骨盤内を外れ、肺など組織にも出来るようです。
また、出来た子宮内膜から出血した場所は傷と判断されます。そして、体が治癒しようと病変部位を覆うような膜を作るのですが、この膜は臓器どうしや腹膜との癒着の原因となってしまうのです。
一度癒着した場所は手術によってしか剥離することは出来ません。この癒着が卵管の動きを悪くすることもよくあります。
月経の時期に病巣部位が出血、剥離をするため、基本的な症状は痛みになります。
子宮筋層内に内膜があれば、月経痛(生理痛)、腹膜にあれば腹膜を刺激することで下腹部の痛みといったように、内膜のできる場所によって痛みの場所も変わります。
チョコレート嚢腫(※)の場合、進行すると月経時以外でも腰痛や下腹部痛が起こります。また、ダグラス窩周辺に癒着があると、性交痛が出たりもします。
※チョコレート嚢腫とは
子宮内膜症の一種です。子宮内膜の病巣が卵巣内にでき、出血を繰り返すことで卵巣に血液が溜まります。そして、体外に排出されることなく溜まり続けた古い血液はドロドロの茶色いチョコレート状のものとなり、卵巣を腫れあがらせます。
これがチョコレート嚢腫です。進行すると卵巣のほぼ全体を占めるまでに大きくなり、また、周囲の組織(子宮、卵管、大腸など)と癒着してしまいます。
月経痛が強い場合でも市販の鎮痛剤を使って、月経の前日、初日、2日目あたりの月経痛(腰痛や頭痛が伴うことも多い)がおさまっているなら、あまり心配しなくてよいようです。
しかし、市販の鎮痛剤を使っても仕事や学校に行けない人、使っても寝こむ人、1週間も使ってしまうほど痛みが続く人は、要注意です。
また、下腹部の手術経験がないのに、月経の出血が終わってから排卵に向かう時期も下腹部痛がある人や、性交痛か排便痛(痔の痛みと区別必要)のどちらかがある人は、内膜症が心配されます。
月経のたびに脂汗を流しているとか、転げまわっているなどという人は、もちろん何らかの問題があります。
以上のような人は、産婦人科への受診をお勧め致します。
子宮内膜症の診断には、2通りの方法があります。
1)問診、内診、血液検査、画像診断(超音波[エコー]、MRI、CTなど)などによる方法
2)腹腔鏡による方法
外来受診で済むほか、患者さんへの負担も少ないという理由から、現在最も多く用いられているのは1)の方法です。しかし、1)の方法で子宮内膜症と診断できる確率は、約75%です。
確実に診断するためには2)の体に小さな穴をあけ、腹腔鏡を用いて診断しなければなりません。
よって患者さんに負担がかかるため、単に確定診断をつける目的だけで腹腔鏡が用いられることはありません。
しかし、妊娠を希望し、お腹の中の癒着の状態などを一度確認しておいた方が良い場合や、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合などは腹腔鏡検査を行います。
担当の医師と相談し、自身の状況に見合った検査方法を選択することが大切です。
<最後に>
第一回目は、子宮内膜症の基礎知識と見分け方について解説を行いました。
子宮内膜症は原因がはっきりとしていないため、お勧めの予防法もあるとは言えないのが現状です。
生活習慣によるホルモンバランスの乱れなどが原因としても考えられるため、食生活の改善やストレス緩和、血行をよくするなどが予防法として考えられます。
喫煙習慣により、子宮筋収縮に対する喫煙の影響や、喫煙により動脈硬化を促進させ、血管を収縮させると言われていますので、子宮内膜症の予防として喫煙は控えた方が良いと思います。
次回は治療法について解説を行ってまいります。
■コラム執筆 池上文尋 氏
オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。