■知れば知るほど引き寄せる!妊娠力UP@基礎知識講座
排卵障害シリーズの第三弾目です。
今回は排卵障害の中でも比較的よく見られる疾患、高プロラクチン血症について解説を行ってまいります。
●高プロラクチン血症とは?
授乳期間中でもないのに血中のプロラクチン濃度が高値を示す場合、そのことを高プロラクチン血症といいます。高プロラクチン血症になると、授乳中と同じような卵巣への抑制が働く事により、不妊(排卵障害・無月経)に結びつくといわれております。
高プロラクチン血症の方は、乳房の張痛があったり、出産もしていないのに母乳が出ることがあります。(乳首をつまんで分泌液が出る)
症状として挙げられるのは乳房張痛、乳汁漏出、月経不順、無排卵月経、無月経、不正出血、排卵障害、不妊、性欲低下、習慣性流産などです。
《プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の解説》
プロラクチン (prolactin, PRL) は、主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞 (lactotroph) から分泌されるホルモンである。様々な作用を持つ。それは下記の通りである。
1) 乳腺の分化・発達や乳汁合成、分泌を促進させる作用
2) 黄体の構造と機能を維持させプロゲステロン分泌を維持させる。このプロゲステロンの作用により排卵を抑え、また子宮内膜を肥厚させる作用
よって、プロラクチンの血中濃度が高いと妊娠しづらい状況になる。
●高プロラクチン血症の原因は?
1) 腫瘍性
PRL産出下垂体腺腫(プロラクチノーマ)脳の下垂体にプロラクチンを作る腫瘍が出来てしまい、そこからプロラクチンが大量に産生されるために起きる病気です。
20~30代の女性に多く、男女比はおよそ1:8。腫瘍は良性で、悪性であることは極めて稀です。自覚症状としては乳汁が出る他にも、頭痛やめまい、そして視野の狭窄が起きるのが特徴的です。
2) 視床下部・下垂体障害
視床下部の機能的障害や視床下部におよぶ腫瘍、炎症、肉芽腫によってドパミンの産出、輸送が障害されるとPRLの分泌が亢進される。特発性の場合もある。
3) 薬剤性
ドパミン遮断薬クロルプロマジンなど、薬剤によってプロラクチンが過剰に分泌される事がある。
4) 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの低下によって視床下部からのTRHの分泌が亢進し、その結果PRL分泌も亢進される。甲状腺機能異常は亢進すると妊娠、周産期に問題となり、低下すると無月経となるため生殖においては非常に問題である。
原因としては上記のようなものがあげられるのですが、残念なことに大多数は「原因不明」でよくわかっていません。
●高プロラクチン血症の診断は?
高プロラクチン血症の検査では、血液中に15ng/ml以上のプロラクチンがある場合を陽性としています。また、検査では15ng/ml以下で母乳の分泌もないのですが、ストレスがあったときなどにプロラクチンが高くなる潜在性高プロラクチン血症もあり、やはり不妊症の原因となります。
潜在性高プロラクチン血症はTRHテストという負荷テストでわかります。潜在性高プロラクチンはTRHテスト15分で70ng/mlを陽性とします。(TRH-甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)
●高プロラクチン血症の治療について
1) プロラクチノーマ(下垂体腫瘍)
治療方法としては、大きい腫瘍には手術が必要となりますが、基本的には薬物療法がメインとなります。使われる薬剤としては、パーロデル(ブロモクリプチン)、テルロン(テルグリド)、カバサール(カベルゴリン)があり、基本的にはパーロデルが標準薬となります。
しかし、これらの薬には「吐気」という特徴的な副作用があります。テルロンはパーロデルと比較すると吐気の副作用が軽減されていますし、パーロデル、テルロンが毎日の服用する必要性があるのに対し、カバサールは週1~2回の服用で済みます。よって、医師と十分に相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。
2) 内分泌異常
治療方法としては、腫瘍が原因の場合は上記の通り、治療を行います。腫瘍などが原因でない場合は、下垂体腫瘍の時と同様のドーパミン製剤(パーロデル、テルロン、カバサール)でプロラクチンの分泌量を低下させる治療を行います。
3) 薬剤性の高プロラクチン血症
原因となる薬剤としては、ピル、胃潰瘍の治療薬、抗うつ剤、降圧剤などの薬を長期間服用することにより、ホルモンバランスが乱れて高プロラクチン血症となる場合があります。
治療方法としては、薬の服用が原因のため、原因となる薬をやめるか、それに代わる薬剤へ変更すれば元に戻ります。それでもプロラクチンが減らない場合は、薬の量を減らしたりドパミン製剤を処方したりもします。
4) その他
その他にも、下垂体性の甲状腺機能低下症や、中絶、流産といった原因で、高プロラクチン血症になる場合もあります。
<最後に>
高プロラクチン血症も実は分かっていない事も多く、検査値も明確に出てこないようなケースも多々あるそうです。ドクターは高プロラクチンを疑い、検査値があまり明確に出ていなくても治療薬を検査的に投与して、身体の状況を診る事もあります。
ここでも内分泌異常になるきっかけとして挙げられているのがストレスです。ストレスをいかに上手にマネージメントするのか?この部分はとても重要と考えられます。
「ストレスはためない。」不妊治療においては鉄則とも言えますね。
■コラム執筆 池上文尋 氏
オールアバウト不妊症ガイドを16年に渡り担当し、これまで、日刊妊娠塾、妊娠力向上委員会や不妊治療お薬ナビ、胚培養士ドットコムなど、不妊治療に関わる多くのインターネットメディアの編集長として活躍、現在に至る。